Home  >  コマツハイブリッド  >  コマツのテクノロジー  >  エンジニアズトーク:コマツ大阪工場

コマツ大阪工場

コマツのモノ作りの基本は、品質と信頼性を追求し、お客様にご満足いただける商品を提供すること。コマツは、お客様第一主義を基本方針に、開発・生産・販売・サービス・管理のすべての部門を現場と捉えて、継続的な改革・改善を行っています。本特集では、油圧ショベルやブルドーザを生産しているコマツ大阪工場から、コマツ製品の品質と信頼性について、さまざまな取り組みを紹介します。

コマツ大阪工場生産部が作り込む品質と信頼性とは?

吉田 和弘
吉田 和弘
森 保暁
森 保暁

高田 大阪工場の生産部は、品質と信頼性をどのようにして作り込んでいるのでしょう。

 PC200などの量産ラインの各工程では実際にお使いになるお客様のことを常に考え、各工程でしっかり品質を作り込んでから、次の工程に渡します。ラインオンしてからラインオフするまでの工程を大きく3分割して、インライン検査をしています。まず、各作業者が自分の作業の品質確認をして、OKだったら次の工程に送る自主検査。それから、生産部内に品質のチェックマンがいて、3分割された工程をチェックシートに基づいて確認します。3分の1、3分の2でチェックマンが確認して、最後の3分の3のところには最終チェックマンがいて、最終チェックをしています。記録をすべてチェックシートに残して、次工程に持っていく。

吉田 組んでしまうとチェックしにくい部分は、自主検査とチェックマンが非常に重要です。性能に関わる部分はもちろん、汚れ、傷、打痕などの外観品質にも細心の注意を払っています。

 自分の担当した作業は指差し確認して「よし」と声を出します。ボルトを締めたら「よし、よし、よし」と指差し確認したうえ、、白マジックをボルトに塗って確認をしています。声を出して指差すことと、ボルトに白マジックでチェックして、本当に完了したということを自ら確認し、後工程に渡す。そして、後工程でチェックマンが、今度は色を変えて青マジックでチェックをします。

高田 コマツ製品のボルトに付いているマジックインクは「検査の証」。お客様からも見えるのですね。

 そうですね。マジックが付いていることで、ご安心いただけると思います。また下転輪やスイングサークルボルトの締め付けなどは、1台ずつスナグトルクと増締め角度を管理しており、データもきちんと機械でトレーサビリティを取って残しています。品質と信頼性を守るうえで、生産部は自分の作業は自分でチェックし、記録を残します。

吉田 不具合情報が上がったら、標準化して、日々の朝礼を通じて作業者間でも共有します。また同機種を生産する海外工場にも伝え、類似機種を生産する他工場とも情報交換をしています。自分の工程でいかに品質を作り込むか、次の工程に不良品を送らないか、各人がその意識を持ってQCテーマも提案しています。

 コマツは品質と信頼性を経営の基本としており、グループ一丸となって追求しています。

品質保証部が作り込む品質と信頼性とは?

コマツ大阪工場のご紹介

伊戸川 生産部では、作業者自らが自主検査を行って100%、製造する立場の別の視点からチェックマンがもう1回検査をして200%の品質保証をする。機械がラインアウトすると、品質保証部検査課が商品ライン検査を実施するので、トリプルチェックによる「300%品質保証」を実現しています。

高田 大阪工場は生産部と品質保証部が一体となって「300%品質保証」の製品を、お客様にお届けしているのですね。

伊戸川 品質保証部の中には、各ラインのラインアウトで車両や部品を検査する「検査グループ」があります。その他に、工場から出た後の保証をするのが「品質保証課」。そしてもう一つ「商品サポート課」があります。品質保証部としては、製品がお客様のところで「きちんと使われている」ということも大切な品質の一つと考えています。お客様により効率よく使っていただき、よりご満足いただくためには何ができるか。「使い方」に関しても、品質と信頼性を追求しています。

 よりよい品質を維持していただくため、特定自主検査のような定期的な点検に加えて始業点検や日常点検が重要となります。またコマツでは、省燃費運転のご提案レポートの作成、安全運転や日常点検に関する各種講習会(コマテック)の開催など、「使い方」に関してもさまざまな取り組みを進めています。

伊戸川 全国各地に販売サービス拠点がありますが、やはり新型機械や特殊仕様車ですと、工場の責任、役割という部分が大きいと思います。

神田 もともと大阪工場品質管理部の商品サポート課は、お客様のご意見を開発や生産部門にフィードバックすることを目的に設置されました。その中には当然、直接対話しないと出てこないご意見や、お客様が潜在的に持っているご意見もありますし、そういう内容を工場の技術者が共有し、情報を集めて製品にフィードバックしています。

伊戸川 これらに加えて全国各地の販売サービス拠点に寄せられたお客様の声も、同様に製品にフィードバックします。よりよい製品とするための貴重なご意見として活用しているのです。

PC200の生産ライン その1 PC200の生産ライン その2
PC200の生産ライン。何度も品質チェックが繰り返される

「KOMTRAX」はオールコマツの品質モニタリングシステム

神田 博史
神田 博史
岩田 繁雄
岩田 繁雄

高田 KOMTRAXも品質と信頼性に寄与するのですか。

伊戸川 はい、KOMTRAXは品質を保証するうえでも重要な機能です。燃費はもうこれ以上改善しないのかとか、もっと効率的に運用ができないかという課題に対して、エンジン回転数や使用頻度など、実際にどんな使われ方をしているのかをKOMTRAXで調査します。エンジンの回転数が非常に高い領域で使われている、あるいはアイドリング時間が長いといった使われ方の情報は、非常に参考になりますし、もう不可欠のツールですね。

神田 品質保証部としては、定期的な稼働状況を把握するのにも大きく役立っています。また万一の不具合発生時にも、その車両がどのように稼働していたかのデータ収集と分析にも活用できます。

高田 製品の開発・設計サイクルのなかでは、使われているのですか。

伊戸川 建機開発センタでは、新型機械のセールスポイントの内容や効果を議論するときに、データで定量的に把握できるために必ずチェックしています。また、それ以上にKOMTRAXでは、お客様ご自身で保有機械の稼働データを収集いただけます。省燃費運転や機械の品質や性能の維持に役立つレポートが得られますので、KOMTRAXは、大阪工場というよりも、オールコマツのセールスポイントです。

コマツクオリティを支える技能伝承と人材育成のしくみ

吉田 和弘
基本作業の習得に取り組む(左)/マイスターの指導に耳を傾ける(右)

高田 『匠の杜(たくみのもり)』について、説明してください。

岩田 技能教育センタ『匠の杜』は、コマツのモノ作りに必要な技術・技能を教育訓練する所です。大阪工場だけでも国内外の社員、協力企業の技能者を対象に、年間5000人から6000人の作業者が技能訓練を受けています。コマツでは、新入社員も中途採用者も期間社員も、匠の杜で研修しなければ作業ラインに入れません。また大阪工場では作業ラインで働く社員の約7割がすでに各種の技能検定の合格者ですが、さらなる上位等級をめざして国家検定やJIS検定の受検、中堅社員のスキルアップとして社内外の技能競技大会などにも取り組んでいます。

高田 匠の杜ではどのように技能研修するのですか。

岩田 なにより品質を作り込むのは作業者の技能であり、効率よく作業者の技能を育てることを念頭においています。長年にわたり先人が蓄積してきた技能をまとめた「基本作業書」を整備していますが、これもテキストだけでなく、映像化して教育のスピードアップを実現しています。また技能は座学だけでは伝えきれない部分があります。そのため高度に熟練した技能者がやってみせ、やらせてみせて、やりながら覚えるという実技指導するマイスター制度を導入しています。現場経験が20年から30年で、トップレベルの技能をもち、また人に教えるための人間性も兼ね備えた10名の専従者が、マイスター室に在籍しています。

高田 匠の杜の研修は自主的に参加するのですか?

岩田 技能向上委員会で技能者の一人ひとりの履修管理をしており、誰にいつ何を学ばせるかという、年間の教育計画を立てています。年1回から2回の研修参加を基本に教育を行っています。はるか昔は職場の職長・班長が行っていた技能伝承が、組織として人を育てる「匠の杜」になりました。これによりコマツ品質を将来にわたって伝えていくことができます。

技能向上委員会は、何を狙っているのか

高田 技能向上委員会は、どのような活動をしているのでしょうか。

谷口 技能向上委員会では工場の職種を、機械、溶接、組立、塗装、熱処理、部品検査、車両検査、メカトロ保全という主要な8職種に別けました。そして体系的な技能教育を実施して、技能を伝承し、人材を育成するという活動を実施しています。確かに私が入社したころは、技能伝承のツールもなく、「先輩の背中を見て盗め」というやり方の時代でした。しかし工場としてそれではいけないという認識があり、また団塊の世代の大量退職という危機感もあり、本格的に技能伝承に取り組んできました。工場長がトップに立って委員会を設置して、8職種がきちっとベクトルと合わせて、組織としての技能向上活動を実施しています。活動内容を定期的に報告してアドバイスをもらったり、全体でレベルアップしていくためにはどうしたらいいかということをディスカッションしたり、その都度、軌道修正しながら、早く確実にをモットーに進めています。

高田 技能向上委員会のミッションとは何でしょう。

谷口 世界中の技能者がだれでも、図面の要求事項に忠実なモノ作りができる、それが基本です。コマツには昔からものすごい技術を持った人がおられて、その人が自分の後任にちゃんと教えてきた。それは30年前からやっている旧来の伝承方法。それを会社として、工場として、組織だってやりましょう、というのが技能向上委員会のミッションです。

「メイド・バイ・コマツ」のブランド確立に向けたグローバルな技能競技大会

谷口 邦彦
谷口 邦彦

伊戸川 「この人しか組み立てられない」ということがあっては、コマツとして困るのです。

高田 技能レベルの向上をめざす競技会やコンテストは実施しているのですか。

谷口 技能向上の成果を発揮する場として、技能競技大会を毎年継続的に開催しています。関東・北陸・関西といった各地区大会や、その代表者、海外現場を含めたオールコマツの技能者全部を対象にしたグローバル大会。その練習や育成訓練などでの交流により、コマツグループ全体の技能レベルを高めていく。そういう考え方やインフラなども含めて現在、世界的な展開が非常に加速してきました。中国の工場でも匠の杜が設立されましたし、各事業所や協力企業にも工房ができたり、委員会ができたりという展開をしています。

高田 技能競技大会は、コマツブランドを支えるだけでなく、技能者の方自身の励みになっているようですね。

谷口 やはり大きな励みになっています。イベントに選手として選ばれることもそうですし、結果的に賞をもらうということが一番すばらしいことです。仮に受賞に至らなくても、そこで先輩から教えてもらったこと、練習過程で培ったものは、自分の財産として一生残りますから。競技大会の期間が終わると職場に戻るのですが、本人の自信がまわりの人のモチベーションアップにも繋がっていきます。

 技能向上のための相互交流や技術の行き来によって、世界中どこの工場で作っても、コマツの品質は高いという「コマツクオリティ」を示す「メイド・バイ・コマツ」というブランドを世界中に認知していただくこと。これこそが各作業者の技能を向上させる最終的な目的です。世界中どこで生産されたものであっても、コマツの機械はすべて信頼できる品質だと認めていただくことをめざしています。

キーコンポーネントを自社生産するメリットとは

伊戸川 博
伊戸川 博

高田 自社で生産されているキーコンポーネントとはどのようなものですか。

 エンジン、油圧モーター、油圧バルブ、減速機、スイングサークルなど、建設機械の性能を左右する重要な部品がキーコンポーネントです。大阪工場では、油圧ショベルやブルドーザの走行装置や旋回装置、大型ダンプトラックの歯車部品などを集中生産しています。

伊戸川 例えばハイブリッド車の低燃費性能を実現するためのキーコンポーネントである専用旋回装置は大阪工場、発電機、インバータ、コントローラーは湘南工場と、開発も生産もすべてコマツの自社工場で行っています。

高田 キーコンポーネントの開発・生産を、なぜ自社で行うのですか。

伊戸川 キーコンポーネントが自社製であることは、建設機械メーカーとしての生命線だと考えています。それが新型車を開発するときの強みであり、量産機の作り込みの強みでもあります。万一問題が発生した場合も、自社製であれば一層の早期対応が可能です。

高田 国内№1メーカーとして、生産量が多いからできる?

伊戸川 キーコンポーネントのなかには、生産量からみたらそう多くはない部品もあるでしょう。けれどもコマツがこれを開発・生産しなかったら、今後の改良ができないといったコンポーネントは、何としてもコマツのノウハウで作り上げていくのだ、というのが会社の基本方針であり、それは重要なことであると私は思っています。

大阪工場が立ち上げた『ダントツ品質活動』

ブルドーザの生産ライン
ブルドーザの生産ライン

 最後にお伝えしたいのが、大阪工場が立ち上げた『ダントツ品質活動』です。

伊戸川 ここまでご説明してきたのは、現在生産している製品の品質をいかに良くしていくか、という話です。これらと同時に、大阪工場ではTier4排ガス規制の対応機などの新型機を「ダントツ品質」の製品ということで開発中です。「ダントツ品質」とは、性能だけでなく、品質・信頼性も確認されたダントツ製品にしていこうということ。工場内でのいろいろな作り込みや量産する場合の役割分担など、そういう着眼点で開発に一緒に入り込んで「ダントツ」の品質を確保した、「ダントツ」な製品、次世代の新型車を出そうという活動です。

ダントツ品質活動をシンボル化してバッジに
ダントツ品質活動をシンボル化
してバッジに

高田 開発と生産・品質保証が一体となって品質を作り込もうということですね。

伊戸川 製品、モノとしての品質というのは、設計だけでは作り込めない。量産されて初めてモノとして現れるので、各部門が協力して品質と信頼性を作り込むという活動にいま、取り組んでいます。それだけでなく「こういう使われ方も、世の中にはあったよ」とか「こういう問題があった」という情報も全部展開して、一緒になって品質と信頼性を作り込む。量産第1号機目からきちっとした製品、新しい機械であっても品質が不安定なものはもう一切ない、という工場の体制をめざす活動です。工場関係者全員がこの「ダントツ品質」をめざしています。

開発拠点、改革の工場がその期待に応えていく

伊戸川 生産規模としては中国の方がずっと大きい時代になりましたが、大阪工場には開発部門、特に建機開発センタがあって、グローバルな技術開発・生産改革の拠点となっています。そこで最新の情報通信技術を活用して、海外の開発設計部門との連携を強化し、各地域の試験研究データや稼働データをタイムリーに把握・集積して、開発力向上やスピードアップを図ります。そして全世界の販売・生産・在庫を日々刻々と把握できる体制を構築して、グローバルな生産計画の精度と柔軟性を高めていくことになります。だから大阪工場の役割は、生産主体の工場というより、開発の拠点でもあり、改革を進める生産工場として位置づけられています。これからもコマツを進化させる頭脳として、また世界中のコマツを動かす心臓として、オールコマツとお客様の期待に応えていきます。

油圧ショベルやブルドーザなどコマツの主力製品を生産する大阪工場を取材して強く感じたこと、それは、製造業としては当然のことかもしれませんが、5S(整理・整頓・清潔・清掃・しつけ)が徹底されていて、ムダ・ムラ・ムリが一切見当たらないことです。5Sは空気のごとく、当然のように工場内に満ちていました。工場の受付を通過してからチリ一つない構内と会議棟。製造ラインでは、人やモノのムダ、工程のムラ、危険なムリが、まったく見当たりません。

品質と信頼性を追求するコマツの姿勢やさまざまな取り組みが、工場全体の雰囲気からもよくわかりました。コマツがモノ作りにおいて「品質と信頼性」をどのように作り込んで、製品をお届けしているのかをご理解いただき、お客様の強みとしてもご活用いただければ幸甚です。

これからもコマツの「価値ある製品」、「価値あるサービス」、「価値ある情報」をよろしくお願いいたします。