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業界動向

「情報化施工」が現場にもたらす品質、安全と効率化

(大地 Vol.106 特別レポート)

建設生産には、調査、設計、施工、監督・検査、維持管理というプロセスがありますが、このなかの「施工」について、ICT(情報通信技術)を活用した「情報化」が、国土交通省の旗振りで進められています。コマツでは、1970年代には建設施工の自動化をめざした排土板制御を開発し、1990年代には災害復旧現場での無人化技術を発展、海外で無人化施工を実現するなど、業界の情報化を牽引していきました。現在でも国土交通省が掲げる『情報化施工推進戦略』にのっとり、試験施工に全社をあげて取り組んでいます。今号では、情報化施工の現状と今後を紹介します。


国土交通省の目標では2012年には標準化

「情報化施工」では、調査に始まる各プロセスで得られる電子情報を施工に活用し、高効率化・高精度化を実現するだけでなく、施工で得られた電子情報も各プロセスに活用し、建設生産のプロセス全体の生産性向上、品質確保を図ります。『情報化施工推進戦略』によれば、国土交通省は、大規模工事では2010年までに、中小規模の工事では2012年までに「情報化施工」を標準的な施工・施工管理方法に普及させることを重点目標としています。

多様化する21世紀の社会では、施工現場でも柔軟かつ精緻な工事が求められます。技術者もより高度な判断力が必要になり、より正確で大量の情報を提供できる情報化施工は、欠かせないものになっていくでしょう。

生産性から安全性、環境まで 建設施工を取り巻く課題

情報化施工の内容に触れる前に、その技術を必要としている建設施工現場の現在の課題について見てみましょう。

(1) 生産効率の向上
建設生産システムは、他業界に比べて生産性の低さが指摘されています。これまでは機械化による生産性の向上が図られてきましたが、限界が近づいています。
(2) 熟練技術者・技能者の不足
日本の人口減少によって、高齢化、若年労働者の不足が業界の課題になっています。今後、日本の技術を支えてきた熟練技術者・技能者が不足することは確かで、経験に頼らない産業構造が求められます。
(3) 発注環境の変化と品質確認の重要性
公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)の施行、入札の総合評価方式、発注者責任の明確化など、発注環境が大きく変化しています。発注者にはより適切に、効果的に監督・検査することが求められます。
(4) 安全性向上
近年の建設業における死亡者のうち、1/4は建設機械によるもの。これを回避するには、接触事故の危険性が高い区域で人と機械が混在しない環境が必要です。
(5) 環境負荷の低減
全産業のCO2排出量のうち、建設産業が占める割合は焼く1割。建設機械の効率的な稼働で燃料消費や建設資材の使用量を削減する必要があります。

情報化施行の種類と普及によるメリット

情報化施工の核となる三次元位置検出方式には、人工衛星を使ったGNSS(汎地球測位航法衛生システム)方式と、光学測量機器を使ったTS(トータルステーション)方式があります。操作方法も高度な情報に基づいてオペレータが判断し、操作するマシンガイダンス方式と、目標設計面になるように作業機を自動制御するマシンコントロール方式に分かれます。

いずれの方式でも、前述の課題を解決する強力なツールとして期待されています。そのメリットについて、社会的側面、施工業者の側面から見てみましょう。

1) 社会のメリット
(1)確実で安心できる品質の提供
施工データが残るので、完成後も必要に応じて施工品質を追跡でき、手抜き工事の防止や瑕疵に対する責任が明確になります。
(2) 工事期間の短縮
建設機械の作業効率が向上するだけでなく、通常はできない夜間作業も効率のよい施工が可能になります。それによって工期が大幅に短縮でき、渋滞や騒音、振動が低減されます。
(3) CO2の発生量の抑制
効率化で建設機械の稼働時間が短縮され、燃料=CO2排出量が低減できます(図4)。また施工精度が向上し、必要最低限の資材での施工も可能です。
2) 施工企業のメリット
(1) 作業現場の効率化
三次元設計データを使って機材配置の確認、施工手順のシミュレーションをすることで、初期設計ミスの修正や手順の確認が事前に可能になります。丁張り、ワイヤ設置作業、敷き均しや検測の回数が減ることで大幅な工期短縮、コスト削減も可能(図5)。また複雑な現場や目視が困難な夜間でも効率よく施工できます。
(2) 施工精度の向上
オペレータの熟練度に大きく依存せずに施工速度、出来形・品質、安全性が確保できます(図4)。出来形・品質はリアルタイムに確認できるので、サンプリングではなく全面的な確認も可能です。
(3) 安全性の向上
あらかじめ入力した三次元設計データをもとに施工するので、建設機械周辺での測量や作業指示。作業補助が軽減し、安全性が増します(図5)。
(4) 技術評価値の向上
総合評価落札方式の入札での技術評価で、情報化施工の活用により高い技術評価を受けることが見込まれています。