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SAISEKIコラム リサイクル

全国砕石技術大会特集
採石跡地の廃棄物最終処分場への転用可能性について
〜岩手大学工学部 建設環境工学科教授 大塚 尚寛〜
合意形成を定量的に評価

1、はじめに
  21世紀初頭におけるわが国の最重要課題の1つに、「資源循環型社会の構築」がある。わが国が今後とも持続的に発展していくためには、廃棄物の発生抑制(Reduce)、再使用(Reuse)、再利用(Recycle)の3Rを進めていくことにより、環境制約・資源制約を克服していくことが必要である。そのための法体系整備が、近年急速に進められている。このような状況下での国内の廃棄物排出量は、資源循環型社会の構築に向けて近年微減傾向にはあるが、2002年度実績で一般廃棄物が5161万トン、産業廃棄物が3億9300万トンと計4億4461万トンもある。廃棄物の処理方法は、一般廃棄物は焼却処分による減量化が中心であるが、産業廃棄物では可能な限り再資源化を行うという方針になっている。しかし、再資源化や縮減化できずに最終処分となる量は、一般廃棄物で903万トン、産業廃棄物では4000万トンにも及んでいる。そのため、最終処分場の残余年数は、一般廃棄物で13・1年分、産業廃棄物ではわずかに4・5年分しかなく、廃棄物最終処分場の確保は極めて逼迫した問題となっている。
  他方、砕石業界をみると、骨材需要の低迷と再生骨材の使用増加という厳しい状況に置かれており、砕石生産量はピーク時の半分以下にまで落ち込んでいる。そのため、倒産や廃業により跡地処理や修復緑化を十分に実施しないまま放置された採石場が出始めており、今後も増加することが想定される。採石跡地は、通常、堅硬な岩盤であり、透水性が極めて低いことから、廃棄物最終処分場の設置条件には最適である。したがって、これらの採石跡地を放置したままとせず、廃棄物の最終処分場として利用することができないかを検討することは、採石跡地の有効利用の観点からも有益であると思われる。これまでにも採石跡地を廃棄物最終処分場に利用しようとする試みは行われてきたが、ほとんどが地域住民の強い反発に会い実施に移されていないのが現状である。その原因は科学的データに基づく技術的検討が不足していることもさることながら、社会的要請と地域住民の合意形成を定量的に評価する手法がなかったことにも由来する。
  そこで、対象課題を体系的に扱うツールであるGIS(地理情報システム)を利用したデータベースに基づき、評価者の意志を反映させるAHP(階層化意志決定法)を適用することによって、採石採掘跡地の廃棄物最終処分場への転用の可能性を定量的に評価するシステムを確立するための研究を行っている。

跡地転用、一般市民は積極的

2、廃棄物最終処分場への転用に関する意識調査
  採石跡地の廃棄物最終処分場への転用に関する意識調査を、砕石産業46事業所と一般市民50名を対象として04年度に実施した。


  図-1は、露天採掘跡地を廃棄物最終処分場に転用することの是非に関するアンケート調査結果である。転用について積極的に取り組みたいと回答したのは、砕石事業者で10%、一般市民で16%であるが、砕石事業者の26%、地域住民の53%は社会的要請が強ければ推進するとしており、条件によっては転用が実現する可能性はあることが考えられる。しかし、砕石事業者の28%が転用は考えておらず、24%が転用には消極的であり、半数が転用を是としていないことになる。また、一般市民の22%が転用に消極的であり、その他と回答した内容をみると、環境汚染の問題を気にしている意見が多かった。


  図-2は、受け入れ可能な廃棄物に関するアンケート調査結果である。砕石事業者と一般市民のどちらも、受け入れ可能な廃棄物は、建設廃棄物のみとコンクリート塊、アスファルト塊のみとする回答が多かった。これは環境に対する影響が少ないことや、処理し易いということが考えられる。

4つのステップで最適地決定を支援

3、GISとAHPを利用した転用可能性評価システムの構築
  転用可能性評価システムは、採石跡地を廃棄物最終処分場として利用する場合に考慮すべき項目を、GISを用いてデータベース化する部分と、AHPを用いて地域住民の合意形成等を含めた転用の可能性について評価する部分に大別することができる。

  転用可能性評価は、STEP1評価基準の抽出、STEP2ウエートの算出、STEP3コンセプトマップの作成、STEP4コンセンサスマップの作成、の4つのSTEPで構成される。これらのSTEPを実行することで、転用可能性評価システムは、最終処分場の適地を抽出し、最終的な最適地の決定を支援することになる。現在はSTEP2まで研究を進めている。
  最終処分場への転用可能性評価という最終目的に対する評価基準として、当研究室でこれまでに構築した東北6県の砕石資源と環境に関するデータベースの中から、表-1に示す34個の項目を採用した。


  AHPを使用して転用可能性ポテンシャリティーを評価する際に、図-3に示すような4層からなる階層構造を仮定した。レベル1は転用可能性ポテンシャリティーを評価するという最終目的であり、レベル2では以下の3つのシナリオを仮定した。
  シナリオ1事業者が受入量や経済性を重視して行う評価
  シナリオ2地域住民が居住地への影響を重視して行う評価
  シナリオ3環境保護団体が自然環境への影響を重視して行う評価
  これらのシナリオを仮定することで、最終的なポテンシャリティー評価では事業者、地域住民、環境保護団体の集団的な同意を得ることができると考える。
  レベル3では一対比較の簡略化のために、各評価項目を、岩盤性状、地下水、地質、地形、水系、気象、自然環境、開発規制、地域社会、経済の10個の項目に区分した。レベル4には、各評価基準を置いた。レベル4について一対比較を行い、各評価基準のウエートを算出した。
  表-2、表-3にシナリオごとのウエートの算出結果を示す。表2より、事業者は地下水や水系、経済といった条件を重視しており、特に水に関係する項目のウエートが高く、環境に対して配慮していることがわかる。経済面でいえば、特に利潤面に深く関わってくる市場距離を重要視しており、利益を重要視していることがわかる。表3より、一般市民は地下水や水系、自然環境といった条件を特に重視しており、一般市民は環境への影響に関心があることがわかる。また、居住地距離という住まいの安全や快適性を重要視していることから、環境に配慮する意識は非常に高いことが窺える。

産学官の連携が不可欠

4、おわりに
  これまでの研究成果によって、GISとAHPを活用することで、(1)転用計画に対する意思決定を効率的に支援することができる、(2)異なる評価基準をもつ集団の合意形成を支援するシステムとなることが示唆された。採石跡地の廃棄物最終処分場への転用のように、環境に直接影響を及ぼすような計画においては、異なる評価基準を持つ集団の同意を形成する際に、AHPを適用した空間決定支援システムが有効であると考えられる。
  採石場は稼働中、休止中、廃止のものも含めると国内に現在2000カ所以上存在する。これらの採石跡地は堅硬な岩盤で透水性も低く、地震にも強いといった特性を有している。また、運搬路も確保されており、居住地区からも一定の距離を隔てている。このような条件を備える埋め戻し空間を新たに選定して造成するには多大な費用と労力を必要とする。したがって、採石跡地が物理的、地域的、環境的要件をクリアし、地域住民の合意も得られ、廃棄物最終処分場に転用可能となれば、採石跡地の有効利用と廃棄物最終処分場の確保という2つの課題を同時に解決できる最善の方策の一つといえる。
  砕石業界は、これまでに大量の建設資材を供給することにより社会資本整備に貢献してきた。現在需要量が減少し、右肩上がりの時代の再来はもはや期待できないが、今後もその使命は変わることがないと思われる。しかし、現実には現在稼働中の採石場のすべてが将来的に砕石工場として存続することは困難である。終掘後の採石跡地を廃棄物最終処分場に転用することは、砕石業界全体としての新たな活路を見出すことになるのではないだろうか。しかし、この課題は1企業で取り組めるものではない。したがって、日本砕石協会を中心とした業界全体としての取り組みはもちろん、社会的要請を背景とした行政側の参画、さらには学会のバックアップといった産学官の連携が必要不可欠と考える。

出典:セメント新聞 2005年9月5日

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