高品質再生骨材の研究開発の経緯
原子力発電所廃止に伴い発生する解体コンクリートを再利用するため、原子力発電技術機構(NUPEC、国の行政改革に伴い03年度末で国からの委託業務はすべて廃止)は、96年度から解体コンクリート廃棄物の高度利用技術の開発に取り組んできた。解体コンクリートから原子力発電所の工事に使用できるレベルの骨材を回収するのが目的で、これを契機に三菱マテリアルの「加熱すりもみ法」、竹中工務店の「機械すりもみ法」などが開発され、原骨材と同等の再生骨材の回収技術をほぼ確立。日本建築センターの「新建築技術認定制度」の第1号技術として認定された(99年)。
さらに、この技術を普及させるため大手建設会社など民間企業が結集して、02年6月、コンクリート再生材高度利用研究会が発足、高品質再生骨材の普及に向けた研究が始まった。これと並行して経済産業省は、日本コンクリート工学協会(JCI)に「建設廃棄物コンクリート塊の再資源化に関する標準化調査研究」(02〜04年度)を委託。JCIでは再生骨材標準化委員会を設置し、高品質、中品質、低品質の再生骨材のJIS化に取り組んできた。
高品質、中・低品質品のJIS化への取り組み
低品質再生骨材については約30年前から研究開発が行われてきたが、構造用コンクリートには使われなかった。建設省(現国土交通省)も2回の総合技術開発プロジェクト「建設事業への廃棄物利用技術の開発(81〜85年)」「建設副産物の発生抑制・再利用技術の開発(92年〜96年)」で再生骨材を取り上げ、95年に再生骨材品質基準を作って使用を推奨したが、発注・設計・施工者とも採用に踏み切らなかった。
こうした経緯があったためJCIの再生骨材標準化委員会では高品質再生骨材のJIS化から着手。JIS A5308(レディーミクストコンクリート)に使用することを目指して標準化を進めてきた。また、建設省の2回の総プロで対象にした現在の低品質品、中品質品にあたる再生骨材は、それらを用いたコンクリートを規格化することにした。
高品質再生骨材はJIS A5308に取り入れられるよう骨材としての規格化を目指したが、中品質、低品質品は骨材ではなく、JIS A5308とは別のコンクリートの規格を考えた。天然骨材とは品質が大きく異なるうえ、一般の生コンと品質管理の方法も全く変わってくるからだ。
そして名称を、高品質品はH、中品質品をM、低品質品をLとし、Hは骨材規格を満足するが、M、Lは再生骨材コンクリートの規格と、明確に分けて検討してきた。その結果、今年3月に「コンクリート用再生骨材H」のJISが公示され、引き続き「再生骨材Lを用いた再生骨材コンクリート」のJIS原案を経産省に提出、現在は「再生骨材Mを用いた再生骨材コンクリート」のJIS原案の作成を進めている。
国の支援が必要
JIS化は普及に向けた第一歩に過ぎない。経産省や国交省には、引き続き各種の優遇支援制度を取ってもらわないと、宝の持ち腐れになる。
前述のように建築では70年代から再生骨材の研究が行われ、捨てコンクリートの一部に今の再生骨材Lが使われてきた。構造用コンクリートではないので、特に法的な規制もない。日本建築学会のJASS5(建築工事標準仕様書「鉄筋コンクリート工事」)でも規定しておらず、自由に使われてきた。再生骨材を用いたコンクリートを専門に製造する工場も現れ、バラス、建築の基礎の割栗、路盤材などに利用されてきた。
一方、構造用としては2000年の建築基準法改正で、構造用コンクリートの大臣認定制度が発足。大臣認定を得たものがこれまでに20件程度ある。
今後の課題
再生骨材HをJIS A5308に取り入れることがまず先決だ。そうすれば構造用コンクリートとして使いやすくなる。すでに日本建築学会では03年版JASS5に再生骨材を加えている。土木では発注者側のスペックに再生骨材を取り込むことが課題だ。
再生骨材H、M、Lとも普及の最大の課題は経済性だ。なかでも、高品質品のHは一定の生産、販売量が確保されないと、収益を確保するまでにはいかない。そのためには解体コンクリート中の微粉(セメント分)を再利用し、商品として販売できるかどうかが鍵を握っている。
現在、再生骨材の約90%が路盤材に使用されているが、今後、予想される解体コンクリートの発生量に対して、路盤材需要の伸びはそれほど見込めない。コンクリート再生ビジネスが安定した基盤のうえで続けられるように、年間を通じて安定した需要が見込めるビジネスモデルを作る必要がある。
コンクリート再生材高度利用研究会も(1)路盤材需要が減少することに、もっと認識を持つ必要がある(2)公共工事等への優先利用を推進する(3)グリーン調達、エコマーク商品等への取り組みを行う(4)廃棄物処理法の特別な取り扱いに対応――など普及に向けた重点施策をまとめている。
同時に、解体コンクリートの安定した受け入れ体制も欠かせない。生産面では路盤材用、あるいは再生骨材L、再生骨材Hだけと、固定した概念で考えるのでなく、柔軟な対応が必要だ。その点でもJIS化により様々な工夫が生じてくるものと期待している。 |